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単発アルバイトの仲介アプリを手掛けるタイミーが26日、東証グロース市場に上場しました。
【参考】日本経済新聞
時価総額(公開価格ベース)は約1380億円と、スタートアップとしては久しぶりの大型上場で、注目を集めています!!
タイミーとはどんなサービスなのか?
大ヒットの理由、競合との差別化は何か?
タイミーのどんなアイデアが特許権になっているのか?
というポイントを見てみたいと思います。ぜひ、ご覧ください!
※本記事は、2024年9月時点での調査に基づいて執筆しております。
タイミーのサービスとは?
タイミーのサービスは、一言でいうと、ワーカーの『働きたい時間』と、企業側(雇用者)の『働いてほしい時間』をマッチングする、スキマバイトサービスです。こちらのサービスは、近年、副業が認められつつある時代の流れにもフィットしているように思います。
『すぐ働けて、すぐお金がもらえる』をスローガンに掲げている通り、ワーカーは、『お金が必要だ!』と思ったら、すぐに働けて、すぐにお金がもらえます。これがタイミーの利用者が多い理由の一つ。
通常、履歴書を作成し、バイトの面接へ行き、採用が決まったら雇用契約を締結し、実際にバイトをして、翌月の決められた日にやっとお給料ゲット!!
あれ?実際にお給料が手に入る頃には、バイトを思い立ってから結構な時間が過ぎている・・・。
なんて経験、これまでになかったでしょうか?
この、『すぐ働けて、すぐお金がもらえる』仕組みを実現するために、タイミーはどのような工夫をしているのか、調べてみました。
ポイント①『すぐ働ける』ための仕掛け
まず、タイミーのサービスでは、履歴書や面接が不要です。条件(必要なスキルや経験)のマッチング、そして働きたい・働いてほしい『時間』のマッチングで採用が決まります。
そして、今回着目したいのが『雇用契約の締結』についてです。
通常の直接雇用では、『雇用契約』を結ぶ必要があります。しかし、タイミーはスポットのバイト。1度、数時間だけ働いておしまいになるケースも多い。それなのに毎回雇用契約を結ぶことをイメージすると、現実的ではないように思います。
そこでタイミーが導入しているのが、雇用契約の締結を、スマホによるQRコードの読み取りで完結させる仕組みです。
具体的には、ワーカーが出勤したときに、勤務先にて提示されたQRコードを自身のスマホで読み取ります。この操作により、雇用契約の締結処理が完了します。この仕組みであれば、たとえスポットバイトであっても、ワーカーさんも店舗も、雇用契約の締結の手間がほぼありませんね。
実はこのQRの読み取り操作により、勤務時間の管理も同時に行われます。実際には、ワーカーさんは退勤時にもQRコードの読み取り操作を行い、勤務時間が記録されます。ここで記録された勤務時間に応じて、給与計算が行われます。QRコードの読み取りひとつで雇用契約と勤務管理ができることにより、働く側も、雇う側も、スポットバイトの実現に対するハードルが下がりますね。そして、この仕組みによって、ワーカーさんにとっての『すぐ働ける』世界が実現されています。
この仕組みは、特許取得されています!
ワーカーの端末と、雇用者の端末からそれぞれ「働きたい時間」「雇用条件」を受け付け、ワーカーと雇用者のマッチングが成立すると、そのワーカーと雇用者とを関連付けるコードを生成します。
さらに、ワーカーが労働する際にこのコードを読み取ることにより、①出退勤管理と②雇用条件への同意(契約締結)を管理することができます。
以上より、タイミーでは、すぐ働ける仕組みが考え抜かれており、特許権により守られていることが分かりますね。
ポイント②『すぐお金がもらえる』ための仕掛け
続いて、スローガンの後半部分、『すぐお金がもらえる』仕掛けについて見てみましょう。
通常、お給料の支払は『毎月X日』のように雇用者側に決められており、例えば翌月にまとめて振り込まれるイメージがありますね。
しかし、タイミーはこのような常識を覆すような仕組みになっており、ワーカーへの『即時払い』が実現できています。
具体的には、ワーカーが労働したあと、雇用者側から報酬が支払われる前に、タイミーからワーカーへ一度報酬を支払い、この報酬はタイミーが立て替えています。
タイミーはいったいどこからそのキャッシュを捻出しているのか?等、会計周りの詳細はこちらをご覧下さい。
これにより、ワーカーは『すぐにお金がもらえる』ことができます。このようなニーズから、スポットバイトの利用がよりいっそう促進されていきそうですね。
さて、この『すぐお金がもらえる』観点については、もう一歩先のアイデアが特許取得されていました。
働く前にお金がもらえる?「前払い」の仕組みを実現するシステムに関するものです。
現在のタイミーのシステムでも、お仕事終了後にワーカーの働きぶりを雇用側が評価する仕組み自体は既に導入されています。
この、ワーカーに対して蓄積されていく評価値を、ワーカーの『信用スコア』とし、この信用スコアを活用して給与の前払いを実現させるというアイデアが、特許取得されていました。
現時点では、働く前にお給料がもらえる前払いの仕組み自体はタイミーの公開情報から確認できませんでした。しかし、この特許取得の際に、タイミーから出されたプレスリリースにおいて、『働く前にお給料がもらえる仕組みの実装に向けて準備できたら』というコメントが記載されていました。これに限らず、信用スコアを活用した仕組みが将来広がっていくのかもしれません。
【参考】PRTIMES:株式会社タイミーが信用経済を用いた、日本初の”働く前に給料が振り込まれる”仕組みでビジネスモデル特許を取得
まとめ
今回はIPOしたスタートアップ企業『タイミー』のビジネスモデルと、その特許について調べる記事でした。
タイミーは、2018年8月にサービスを開始。IPOまでたった6年というスピードでした。特許を調べてみると、サービス開始早々に出願されている様子が窺え、『単発バイトのマッチング』ならではのアイデアをしっかりと権利化されていることが分かりました。
2024年には新規事業として、ユーザのキャリア形成や長期就業の支援等にも注力されているタイミー。さらに勢いが止まらないタイミーに、今後も目が離せませんね!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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オフィシャル・ライターのご紹介
作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
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