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前半の記事では、タクシーの配車に関するアイデアについて紹介しました。

タクシー移動を快適に!
GO株式会社の特許出願(前半)
初めてGOアプリを利用した際、配車の手軽さも期待以上だったのですが、それ以上に驚いたのが、目的地に到着した際のお会計でした。
後半記事では、支払いも便利!なGOのシステムと特許出願を取り上げたいと思います。
※本記事は、2025年1月時点での調査に基づいて執筆しております。
到着したら降りるだけ、自動決済機能
アプリを介して配車されたタクシーに乗車し、目的地に到着したとき。お会計、と鞄から財布を取り出そうとすると、後部座席のドアが開き、
「ご乗車ありがとうございました」と、運転手さん。
「あの・・・お会計・・!!」と慌てると、
「もう済んでいますよ(笑)」と返ってきました。
到着後にお金を支払ったり、領収書を発行してもらったり・・・
一切なく、サッと降車できる手軽さに感動しました。
確かに、支払い情報をアプリに登録しているので、アプリを介して自動で決済が可能なのですね~。タクシーの配車と連動して自動決済が可能なのがGOPAY機能です。
では、アプリを介した配車ではなく、流し運転のタクシーに乗車した場合は、この便利な決済機能は使えないのでしょうか?当然ですが、流し運転の場合、道で止めたタクシーに乗車するので、ユーザの情報が把握できるタイミングがありません。
しかし、流し運転の場合も、タクシー乗車中のひと手間で事前決済が可能なようです。
助手席や運転席の後ろ側に設置されている「後部座席タブレット」が活躍します。

タクシーでの移動中に、自身のスマホを後部座席タブレットに近づけます。(又はタブレットに表示させたQRコードをスマホで読み取ります。)
あとは、スマホの画面に表示されるお支払い方法を確認したのち、支払うボタンを押すだけです。
タクシーの移動中にこのひと手間を行えることが、目的地に到着後にサッと降りられる体験につながります。
さらに調べてみると、このアイデアは、特許取得されていることが分かりました!
特許6646008
【発明の名称】精算システム、ホスト端末、精算方法、プログラム及び車両
【出願番号】特願2017-104363
【出願日】平成29年5月26日
請求項1の内容を簡単に説明します(正確さより分かりやすさを優先して記載しておりますことをご了承ください)。
まず、管理端末(後部座席タブレット)に取引情報が表示され、その取引情報は、乗客のユーザ端末で読み取られます。
ユーザ端末は、アプリを介して、読み取った取引情報と、アプリによって管理されているユーザ情報とを併せてサーバへ送信します。
続いて、運賃が確定すると、後部座席タブレットは、確定した運賃と、取引情報とを併せてサーバへ送信します。

続いてサーバでは、決済処理が行われるのですが・・・
ユーザ端末と後部座席タブレット、それぞれから受信した情報には、いずれも同じ「取引情報」が含まれているので、その取引情報をキーとして、ユーザの情報と、そのユーザが支払う運賃とを結びつけることができます。これにより決済処理が実行できるといった仕組みになっています!

キーとなる「取引情報」の具体例としては、営業番号等の個別取引番号、車両無線番号、乗車日時、乗車場所、会社ID等が含まれています(明細書段落0038)。タクシー会社が顧客に提供するサービスが特定できる情報のようですね。
このように、タクシーの配車だけでなく決済も連動させることにより、タクシーの配車から目的地でタクシーを降りるまで、ユーザの手間がかなり低減することがわかります。同時に、タクシーの運転手さんの作業負担も軽減されますね。タクシー移動がより使いやすいものになっていることが分かります。
※以下は知財業界の方向け
上記でご紹介した特許は、分割出願が繰り返されています(現時点で第5世代)。決済周りについて重点的に特許網を構築している様子が伺えますね。

画像引用元:J-PlatPat
タクシーの配車時に運賃が決まる?
GOアプリには、運賃の計算方法も工夫が施されていました。
アプリを介してタクシーの配車手続きを行う時、現在地と目的地を設定すると、その時点で運賃が決まり、利用者に表示されるというものです。「事前確定運賃」と呼ばれています。運賃は、走行予定ルートの距離によって決まります。
確定運賃を確認してから配車手続きを開始するので、ユーザは安心して利用ができます。予想外の渋滞で、タクシー乗車中にメーターを見ながらドキドキ・・・なんてこともなくなります。
もちろん、従来通り、メーターによる計算方法で運賃を決定することも可能です。メーター運賃と事前確定運賃のどちらが高額になるかは道路状況によります。ユーザーが配車手続きをする際に、運賃算出方法を選択する仕組みになっています。

メーター運賃においても、配車前におおよその運賃が表示されます。道路状況により、実際の運賃と差額が発生する可能性があります。
さて、ここまでの話だと、事前確定運賃を選択しておくのがよいかな?と思うのですが、事前確定運賃による計算で一つ気をつけなければならない点があるようです。それは・・・
タクシー乗車中に、途中で行き先を変更することになった場合です。これは時々あり得る状況なのかなと思います。
よくよく考えてみればそうですね。タクシー乗車時には既に運賃が確定しているのですから、途中で行き先を変更してしまうと、話が複雑になってしまいます。
したがって、アプリを介してタクシーを呼んだあとにルート変更することになった場合は、確定した運賃を支払ったあとに、新たな目的地へ向かいます。新たな目的地までは、メーター運賃による計算を行います。
こちらに関する特許出願を見つけました。
特開2025-023142
【発明の名称】タクシー情報処理方法、タクシー情報処理システム、タクシー端末装置、コンピュータプログラム及びタクシー端末システム
【出願番号】特願2024-209002 ※特願2021-37493の分割出願
【出願日】令和6年11月29日(本記事公開時点で審査中)
現状の請求項1の構成は以下のようになっています。

前半部分(赤枠は筆者追加)は、事前確定運賃の確定方法に関する部分ですね。ユーザが登録した乗車地/目的地から事前確定運賃を確定します。
後半部分(青枠は筆者追加)は、タクシー乗車後に行き先が変更になった場合に、事前確定運賃の決済処理を行うといった内容です。
このように、事前確定運賃のサービスを導入する際に生じる課題への対策についても、しっかりと権利化を進めている様子が伺えます。
以下は知財業界の方向け
上記の案件は特願2021-37493の分割出願で、この案件以外にも分割出願が確認できました。

前章と同様、分割出願を活用されています。
GO株式会社の、分割出願を積極的に活用する戦略が伺えますね。
まとめ
前回記事では「配車処理」について、そして今回は「決済処理」についての特許出願を調べてみました。呼びたいときに、呼びたい場所に、すぐにタクシーを呼ぶ。目的地に到着したら自動で決済され、運転手さんとのやり取りなしでそのまま降りられる。GOアプリは人々の移動がラクになる世界を実現させ、そのような世界を実現させるための工夫を特許出願しています。
移動をラクにする先には、他のユーザとの相乗りや自動運転などの構想もあるようです。
移動がラクになる分だけ、行動の選択肢も増える。今後のGOの新たなサービスも目が離せませんね!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!

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作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
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