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先日の大阪出張のときのこと。
普段タクシーを全く使わないし、そのエリアのタクシー事情が全くわからなかったので、タクシーアプリ『GO』の「AI予約」機能を使ってみました!

(画面で選択している場所は適当です)
手配したい日時と車両の台数を指定するだけで完了。予約は、当日(15分前)だけでなく、7日前から可能です。
当日、予約した時間が近づくと、「タクシーが到着しました」との案内が!
カフェの外に出てみると、タクシーが停まっておりました!素晴らしい。
サクッとタクシーが手配できたこの経験が印象的で、以降、GOアプリを利用しています。
本日はGOアプリを提供する企業「GO株式会社」に関する記事です!
※本記事は、2025年1月時点での調査に基づいて執筆しております。
GO株式会社とは?
「移動で人を幸せに。」をミッションに掲げているGO株式会社。
提供されているタクシーアプリ『GO』のダウンロード数は、2500万を超えています!
2020年、かねてからタクシーの配車アプリを開発していたJapanTaxi株式会社と、同じくタクシー配車アプリ「MOV」を提供するDeNAのMOV部門とが統合した会社(当初は社名を「株式会社Mobility Technologies」とし、2023年4月にGO株式会社へ社名変更)。
タクシー事業を主軸とする日本交通系列のJapanTaxi株式会社と、インターネット関連事業に強いDeNAの一部が手を組み、よりいっそう使いやすいアプリが誕生しました。
タクシー業界のDX化を進めているGO株式会社は、特許出願数も30を超えています(2025.1時点)。『GO』アプリが人気の秘密、GO株式会社が注力していることを、知財の視点で見ていきましょう!
前編である今回は、『配車』に関する特許をピックアップしてご紹介いたします。
乗務員にも乗客にも効率的なタクシー配車方法
1件目にご紹介する特許は、配車される車両の決定方法に関する発明に関するものです。配車される車両の決定に際して、乗務員にとっても乗客にとっても効率的な方法を示しています。
特許第7260403号
<発明の内容>※下の図の「配車管理装置」を主体として説明します。
タクシーを呼ぶ依頼をユーザから受け付けると、空車状態であるタクシーが複数台特定されます。特定された空車タクシーに対して配車依頼を行っていく際、複数のタクシーに対して一度に配車依頼を送信するのではなく、下図のように順番に行っていきます。

まず、1台目の空車車両に対して配車依頼を行い、車両からの応答期間を設けます。
1台目から一定期間無応答だった場合、2台目の空車車両に対して配車依頼を行い、同様に応答期間を設けます。ここで、1台目の応答期間が終了する前に2台目に対して配車依頼を行うところがポイントです。
さらに、1台目も2台目も一定期間無応答だった場合、(応答期限内であっても)、3台目の空車車両に対して配車依頼を行い、応答期間を設けます。
上の図では3台目の車両から承諾が返ってきたので、3台目の車両に対して配車指示が出ていますね。
例えばこのあと、2台目の車両からも承諾が返ってきた場合は、2台目の車両に対しては、ドライバーの端末にこのような画面が表示されます。

上述したように、あるタクシーに配車依頼を行ってから、当該タクシーの応答期間が終了する前に、別のタクシーの配車依頼を行っていくところがこの発明のポイントです。これによって、ユーザがタクシーを確保するまでの待ち時間を短くすることができます。一方、同時に配車依頼を行うよりも、同時に複数の乗務員が承諾を出してしまう確率を低減することができ、承諾したのに他のタクシーに配車が決まった・・・といった事象の発生を減らすことができます(明細書段落0020)
配車依頼の順番は、例えばユーザの乗車予定位置とタクシーの現在位置との距離が近い順に決定されます。ユーザの乗車予定位置の近くにいるタクシーが配車される確率が高くなるので、ユーザの待ち時間がより短くなりますね。
こちらの内容は、令和1年に事業者向け説明会にて公開されたことが特許公報に記録されていました(新規性喪失の例外適用)。
法規制を考慮したタクシー配車方法
続いては、法規制を考慮したアイデアが特許権利化されていたのでご紹介します!
タクシーに乗りたいときは、タクシーに出会えそうな場所(駅のロータリーや大通りなど)へ出向き、そこで出会えたタクシーに乗車する、ということが多いのかなと思います。
(私の住む地域は地方なので、電話で呼ぶ、なんてことも結構ありましたが!笑)
実は、タクシーは営業エリア(タクシー会社が許可を受けて営業活動を行える区域)以外での乗客の輸送を禁止されていることが道路運送法第20条で定められています。【道路運送法はこちら】
第20条の内容を簡単に説明すると・・・
より具体的には、タクシーはそれぞれ営業エリアが割り当てられており、乗客の乗車地又は降車地のいずれかが営業エリア内である必要があるとのこと。
つまり、遠方までお客さんを乗せた帰りに、そのエリアで別のお客さんに乗車してもらうことが法的に難しい場合があるのですね。
GOアプリでは、タクシーを呼ぶ際、乗車地だけでなく目的地も入力する仕様になっています。

ユーザによって入力される目的地情報は、運賃を確定させる目的もあると思うのですが、上記の道路運送法を考慮した配車にも利用されているようです。
前置きが長くなりましたが、いよいよ特許の紹介です。
特許第7512048号
<発明の内容>
乗客によって入力される情報に応じて、配車される車両の候補として特定される範囲を変動させます。
①迎車地(乗車地)のみユーザによって入力された場合は、迎車地付近にいる車両のうち、営業エリアに迎車地を含む車両が候補として特定されます。
②迎車地と目的地がユーザから入力された場合は、迎車地付近にいる車両のうち、営業エリアに迎車地又は目的地を含む車両が候補として特定されます。

(図は筆者作成)
つまり、②迎車地だけでなく目的地も入力した場合は、候補として特定される車両の数が増える可能性があり、迎車地により近くにいる車両が配車できるという仕組みになっているのですね。

タクシー事業者及び車両が管理されているデータベースには、「エリア情報」が含まれており、営業を許可されているエリアが特定できるようになっています。この情報をもとに、上述した①と②について、候補となるタクシーを特定します。

法規制を考慮する中で、配車を最大限に効率化するアイデアが権利化されていました。
まとめ
一度GOアプリを使うと、もう手放せなくなる!その大きな理由は、タクシーをとても手軽に手配できるところにあります。GO株式会社の特許出願のうち、『配車』に着目したものはまとまった数の出願が確認できました。
もちろん『移動で人を幸せに』するためのアイデアは配車に限らず、様々な視点での出願が確認できました。
後半記事では、他の視点で記載されているアイデアについてご紹介しながら、引き続き、GO株式会社の考える未来について調べてみたいと思います!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!

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オフィシャル・ライターのご紹介

作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
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