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今回は、回転寿司チェーンストアで有名な『くら寿司』にまつわる特許をご紹介いたします!特に、くら寿司が掲げているプロジェクト『スマートくら寿司』に関連する特許に着目していきますよ!
『スマートくら寿司』ってなに?
『席案内から会計まで、どんな仕組みになっているの?』という方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2023年12月時点での調査に基づいて執筆しております。
スマートくら寿司とは?
まず、くら寿司が掲げている、『スマートくら寿司』とは、いったいどんなプロジェクトなのでしょうか?簡単にご紹介しますね!
新しい生活様式のもと、最先端技術を駆使して非接触型の推進、利便性の向上を図り、安心・安全そしてワクワクする夢のあるレストランを創造する「スマートくらプロジェクト」により、コロナ対策としてコンタクトレス・タッチレス※を実現した新しい食空間が誕生。
引用元:くら寿司公式サイト
https://www.kurasushi.co.jp/smart_kura/restaurant.html
つまり、予約から席案内、お会計まで、スタッフを介さず自動で行うことができます。
くら寿司公式サイトに基づき筆者作成
本記事では、『スマートくら寿司』のプロジェクトの中の、席案内、セルフチェックに関する記事についてご紹介いたします。
セルフ席案内システム
混み合う飲食店によくある光景は、こんな感じではないでしょうか。
上のような席案内が、くら寿司の席案内システムだと下の図のようになっています。
来店前にスマホから予約作業を行い、予約番号(214)を予め取得しておきます。来店後、入口付近のチェックインシステムに、予約番号(214)を入力することでチェックイン完了です。席が空いて順番が回ってくると、モニタでお知らせされるので、発券して席番号を確認し、その番号の席へ自分で向かいます。
ここで、先に特許出願の内容をネタバレする形になりますが、発券時の時刻を記録する処理があるようです。おそらく、従来は店員さんが伝票を各テーブルにセットしていた作業が、赤字部分の『時刻を記録』する処理に置き換わったイメージかなと思います。
前置きが長くなりましたが、このセルフ案内のシステムが特許出願されていたので、ご紹介いたします。
公開番号:特開2022-012582
出願日:令和2年7月1日
出願人:くら寿司株式会社
ステータス:未審査請求
この特許出願の請求項には何が書いてあるのか、見てみたいと思います。(特に実際のシステムをイメージしやすい内容となっている、請求項1、2、7の内容を図にまとめています。)
席の収容人数に対する予約人数などの条件が合致したとき、お客さんのチェックイン入力を介して受け付けた入店受付情報と、店内の席が空席になった席情報を関連付けます(席設定部)。
さらに、この席番号を、予約のお客さんへ通知します(通知部)。ここでお客さんはセルフで指定された席へ向かいます。
この処理の流れで、お客さんがセルフで入店~着席までをスムーズに行うことができます。
更には、入店受付情報と、席情報を関連付けるタイミングで、飲食開始時刻として、そのときの時刻を記録します(開始設定部)。この飲食開始時刻を示す情報は、お会計の際に必要なので、後ほど説明します。
セルフチェックシステム(自動会計)
さて、無事席に着き、飲食が済んだら次はお会計です。回転寿司といえば、会計時にテーブルに積みあがったお皿を店員さんが数えに来てくれていましたよね。くら寿司では、食べ終わったお皿を回収するシステムが各座席に設置されているので、お皿を投入口に入れるタイミングで数がカウントされていて、投入口にお皿が入らないメニューだけ、店員さんが確認に来てくれていた記憶があります。
近年はその仕組みがさらに進化しており、お皿のカウントが完全自動になっています!席に設置されているタブレットで会計金額の算出・確定を済ませ(セルフチェック機能)、セルフレジで支払いするだけ。お会計工程に店員さんの介入がなくなりました。
これはいったい、どんな仕組みになっているのでしょう?
飲食物のカウント方法についても、公開特許公報にいろいろ書いてあったので、ご紹介します。
その①:タッチパネルディスプレイの注文情報を記憶
席のタッチパネルを介して注文した内容(注文情報)を蓄積していきます。
ちなみに、座席にあるQRコードを読み込めば、自分のスマホからも注文が可能です。自分のスマホを介した注文も履歴が残るので、会計金額の算出にその情報が使われます。
これはシンプルな仕組みで、イメージしやすいですね。
しかし、これだけではレーンから取った分のお皿が集計できていません。
その②:レーンから取ったお皿をカウント
座席ごとに、レーンの上流側、下流側にカメラが配置されています。
この2台のカメラが確認した、お皿の蓋の状態の変化に応じて、レーンからお皿が取られたかどうかを判断します。具体的には、下記のように判断しています。
単にお皿が取られたかどうかだけでは、会計金額の算出ができませんね。取ったお皿のメニュー(金額)の情報は、QRコードで読み取ることによって把握します。
QRコードが蓋についていて、蓋が開いた状態になると、カメラから読み取りやすい角度になるようになっています。
その③:投入装置によるお皿のカウント
最後に、投入口に投入されたお皿の枚数をカウントするシステムです。投入口からつながるお皿の通路にセンサーが備えられていて、お皿の通過を検知しています。
しかし、この方法のみでは、丼物などの投入口に入らないお皿はカウントすることができません。上で紹介した①〜③の手法を上手く組み合わせて、飲食物を集計しているのでしょう。
特開2022-012582の明細書には「①〜③の情報をどのように用いてもよい」と記載されています。たとえば…
①(タブレットによる注文履歴から集計)+②(レーンから取った分を集計)
で合計金額を算出し、③(投入口に投入されたお皿の枚数をカウント)の結果と一致するかどうかで合計金額を確定するのが一つのやり方として考えられますね。
実際、くら寿司でそのように合計金額を確定しているのかは分かりませんが、参考文献として読んだ本には、以下のような情報がありました。
AIカメラで検出した、レーンから取ったお皿の数と、タッチパネルで注文した商品を自動で合算。投入口に入れたお皿の数とも照合して、ずれがなければお皿のカウントは完了。
お魚とお寿司のナイショ話(岡本浩之)より引用
特許出願公報の明細書の内容と、かなり近いアルゴリズムになっていることが確認できました。
こうして入店・席案内から会計まで全てお客様がセルフでできる仕組みを作り出したくら寿司。そしてその仕組みは、しっかりと特許出願されていました。
くら寿司に足を運んでみると、この「スマートくらプロジェクト」の秘密を体験できます!この記事を読んで頂いた方は、次回くら寿司へ行くときは、より楽しめるかも?ぜひ、いろんな仕掛けや工夫を確かめてみてください!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
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BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
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