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今回は、キャッシュレス決済の『送金機能』に着目した記事です。前回記事でご紹介した『メルペイ』をはじめ、各社がユーザ同士での金銭の授受が可能な機能を搭載しています。
本記事では、特許出願からみたユニークな送金機能をピックアップしてご紹介いたします。
『各社どんな出願があるの?』 『送金機能って特許取得できるの?』 という方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2024年2月時点での調査に基づいて執筆しております。
直感的な操作がポイントである送金機能(出願人:メルカリ)
まずは前回に引き続き、メルカリの特許出願です。
直感的な操作で、他のユーザへの送金操作を簡単に行える点がポイントになっています。送金操作がどのように請求項に記載されているのか見てみましょう。
公開番号:特開2020-177279
発明の名称:情報処理プログラム、情報処理方法、及び情報処理装置
出願人:株式会社メルカリ
出願日:2019.4.15
ステータス:拒絶査定(※)
スマホのスワイプ操作を上手く活用した送金機能です。具体的には、スマホのスワイプ操作の程度と方向で、①金額の決定②送金or送金リクエストの選択を行います。
まず請求項1では、お金のやり取りをする相手であるユーザ(決済対象ユーザ)のアイコンが画面に表示されている状態で、画面をスワイプする距離(操作距離)に応じて決済金額を決定する構成が記載されています。
さらに請求項3及び4では、スワイプの向きによってユーザに対して送金をするのか、又は送金リクエストを送るのかが決まります。表示されているユーザのアイコンに向かう方向(第1方向)への操作する場合は、そのユーザに対して送金をするための処理がされます。一方、ユーザのアイコンから離れる方向(第2方向)へ操作する場合は、そのユーザに対して送金リクエストを送るための処理がされます。
①送金金額の決定と②送金または送金リクエストの決定について、 直感的に操作できる点が、ユーザ目線のアイデアだなと感じますね。
※こちらの文献は、拒絶理由通知が発行された後、意見書・補正書の提出がないまま拒絶査定となっているようです。上記の請求項は、出願時の請求項です。拒絶理由通知の内容を確認してみると、スワイプの向き(請求項3、4)については前向きな示唆(拒絶の理由を発見しない)がありました。
遊び心ある送金機能(出願人:pring)
続いて、上記でご紹介した特許出願と同じく、送金のための操作について特許取得されている文献を発見したのでご紹介します。
番号:特許6654730号
発明の名称:電子マネーの送金プログラム、電子マネーの送金方法及び電子端末
出願人:株式会社pring
出願日:2019.7.10
ステータス:登録
早期審査対象案件です
図の右下にある送信開始ボタンをタッチすると、送金対象アイコンのリスト(硬貨のアイコンが複数)が表示されます。ボタンをタッチしたまま、送金したいアイコン(100円硬貨のアイコン)まで指をスライドさせます。そして、選択した送金対象アイコンから指を離すことにより、アイコンに対応する電子マネー(100円)を相手方に対して送金するための処理が行われます。
※こちらは登録査定となっているため、登録時の請求項1の内容を図示しています。
先に紹介したメルカリの特許出願と同様に、スワイプ操作を活用した送金処理に関するアイデアですが、スワイプ操作の活用方法がそれぞれ異なっていますね。
まとめ
今回ご紹介した特許出願は、ユーザの操作性やユーザ体験の観点から出願されているものでした。いずれの特許出願も、ユーザから受け付けたスワイプ操作に基づいて送金処理の内容が決定されて実行されるという発明に関するものですね。その際にユーザに表示される画面が変化する点も特徴的です。
このような特許出願は、仮に他社が実施している場合に、比較的発見しやすい発明であるという点から、特許出願するメリットがあると考えられます。また、このようなアイデアはプロダクトの特徴になり得るポイントであり、特許で守るという戦略を取るケースが大いにあると考えます
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
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