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今回は、『タカラトミーの玩具に関する特許出願』の記事です。
株式会社タカラトミー(以下、タカラトミー)は、実は、玩具に関する特許をたくさん出願しています。明細書の内容を見ていくと、「これは、あの特許かもしれない・・・!」と予想できるものも中には存在します。
『おもちゃは特許で保護されているの?』 『タカラトミーはどんな特許を出願しているの?』 と気になる方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2024年4月時点での調査に基づいて執筆しております。
目次
図面からおもちゃ探し
まずは手始めに、図面からおもちゃを探してみましょう。子供が欲しがっていたあのおもちゃも、見つかるかもしれませんよ!
本記事では、私の息子達が大好きな「プラレール」に関するおもちゃを見ていきます。今回は特許図面、意匠図面から探してみました。
どきどきマウンテンDX
実物にかなり忠実な姿で、特許図面に描かれています。
ぷっしゅでゴー
対象年齢が1歳半からのプラレールおもちゃです。連結部分が面ファスナーで構成されているのが特徴的ですね。
さくさくつみおろしターミナル
プラレールでトミカを運ぶおもちゃです。発想がユニークですね!
クロスライナー
こちらは実車を玩具化したものでなく、タカラトミーオリジナルデザインの車両です。曲面の窓が特徴的ですね。意匠登録されていました。
おもちゃにまつわる特許を見るのは宝探しみたいでワクワクしますね。
特許出願ピックアップ①「蒸気がシュー!でっかいトーマス」
さて、上記の図面探しの際に見つけた気になる特許と、特許から想定されるおもちゃを2つピックアップして、本記事にてご紹介させていただきます。
まずはでっかいトーマスから。
特許7133077【図1】・・・この図面はもう、トーマス一択ですよね!?
番号:特許7133077号
発明の名称:噴霧装置及び走行玩具
出願人:株式会社タカラトミー
出願日:令和3年10月12日(2021.10.12)
ステータス:登録
こちらの特許は、本物みたいに蒸気を出しながら走行する、トーマスのプラレールおもちゃに関するものです。このような仕掛けによって、子どもたちが夢中になれる様子が想像できますね!
この、蒸気を噴霧する機構に関するところが特許として出願されているのかな?と気になります。
実際のところ、蒸気を噴霧する仕組み自体は公知の技術のようでした(明細書に記載があったので後述します)。
明細書を見てみると、タンクユニットの内部構造についての発明であることがわかります。
蒸気を噴霧するので、車両おもちゃの内部のタンクには水を保持しなければなりませんが…おもちゃを扱う対象は子供なので、おもちゃを倒したり、ひっくり返したりしても、タンクの水がこぼれないような構造にしたいところ。
そんな工夫が、特許になっていました。
おもちゃが横転しても、上下逆さになっても…水を吸い上げる綿棒と支持壁の間から水が漏れない構造になっています。
請求項では、タンク内に貯留する液体(水)の最大液量について規定されており、タンクの上下反転時及び横転時において液面高さが内部開口に到達しない液量であることが記載されています。
タカラトミー公式サイトにも、タンクユニットについて特許出願中の表示がありました!(2022年1月現在は出願中のステータスでした。2024.4現在は既に登録になっています。)
また、今回の権利範囲には直結していませんが…明細書には、上記を発生させるメカニズムについても言及されていました。
<明細書本文より抜粋>
タンクユニット2(貯留タンク21)から水Wを吸い上げた綿棒25を例えば超音波振動で振動させて、霧(霧化粒子)を上方に発生させる。【0035】
明細書の記載より、蒸気を発生させる方法自体は一般的なやり方が記載されており、「車両おもちゃを倒しても、逆さにしても、タンク内の水がこぼれないための構造」が発明のポイントとして、請求項に規定されていました!
子供が実際におもちゃで遊ぶケースを想定した時に、おもちゃとして重要なニーズが権利化されているように見えますね。
特許出願ピックアップ②「蒸気がシュッシュッ!トーマスセット」
ピックアップ①でご紹介した「でっかいトーマス」が発売される数年前から、同様に蒸気が出るトーマスおもちゃがタカラトミーから発売されていました。
トーマス車両にタンクを備えるのではなく、車両を給水場に移動させて給水する仕様になっているようですね。
タンクレス蒸気システム(特許出願中)の表示もありますね!※現在は下記の通り、無事登録になっています。
番号:特許6144398号
発明の名称:液体霧化装置
出願人:株式会社タカラトミー
出願日:平成28年9月26日(2016.9.26)
ステータス:登録
早期審査対象出願
権利化されていたポイントは、車両の中の液体を検知する構成でした。
蒸気(霧)が出るメカニズム自体は、上でご紹介した「蒸気がシュー!でっかいトーマス」と同じです。振動板に水滴を接触させ、微粒子化することにより霧を生成させています。
この振動板が空振動(液体が接触していないのに振動)すると、おもちゃの寿命が縮まってしまうので(いわゆる経年劣化が進む)、液体が接触していないときは空振動防止のため、振動板を振動させない保護制御が実行されます。
では、保護制御が実行されるトリガーとなる、液体の接触(又は液体の接触がない)判断はどのように行っているのでしょう?
振動板の付近に備えられている2つの電極(うち一つは振動板の一部)に水滴が接触している場合と、接触していない場合の電圧値の違いにより、振動板への水滴の接触の有無が判断されています。
この機構により、子どもたちがたくさん遊んでも、すぐに寿命で買い替え・・・などという事態が回避できそうですね!!
まとめ
プラレールに関する特許出願をたくさん見つけることができました!
中でもトーマスプラレールは、蒸気が出る仕掛けを搭載するにあたっての技術が権利化されている様子が分かりました。
車両側にタンクを搭載しない「タンクレス設計」、さらには、子供が安全に遊べる「タンクユニット」など、様々なアプローチで、いかに子供が安全に遊べるか、壊れにくいか、親が見守れるかの観点で特許取得されているのが印象的でした!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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オフィシャル・ライターのご紹介
作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
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