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今回は、『緩まないネジ』についての記事です。
『緩まないネジ』とは、先日メディアで取り上げられていた道脇裕氏により開発された発明品です。本記事では緩まないネジのメカニズムと特許の内容をご紹介したいと思います。
『なぜネジが緩まないの?』 『どのように特許取得されているの?』 と気になる方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2024年4月時点での調査に基づいて執筆しております。
社会課題を独自の発明で解決!
こちらの『緩まないネジ』は、つい先日、テレビ東京「日経スペシャル カンブリア宮殿」で取り上げられていました!
なかなか解決策が見つからない課題を、技術の力で独自の切り口から解決する道脇氏。番組では、「どうしても発生してしまうネジの緩み」という、身近な課題に対して技術の力でアプローチしていく姿が取り上げられています。
緩まないネジの仕組み
道脇氏の発明品、「緩まない仕掛けを持ったネジ」。
日常生活でも「ネジがいつの間にか緩んでいる」という経験はあるのではないでしょうか?発明品をご紹介する前に、まずはネジが緩んでしまうメカニズムについて、簡単に見てみようと思います。
まず、ボルトとナットで部材が固定されている状態とは、下記の状態であることを指します。
「ねじが緩む」とは、座面と部品の間に生じている摩擦力が失われてしまうことにより起こります。
さらに詳しく調べてみると、ネジが緩む原因はさまざまです。主な原因を「ナットが回転して緩む場合」と「ナットが回転しないで緩む場合」の2つに分けて整理してみます。
道脇氏の発明した「緩まないネジ」は、ナットの回転を防止することにより、緩みを回避している構造になっています。
それでは、なぜ、ナットの回転を抑制できるのでしょうか?
それは、①ボルトの特殊なねじ山構造と、②右ねじナットと左ねじナットとの両方を用いる締結構造に秘密があるようですね。
①ボルトの特殊なねじ山構造
通常のボルトは、右回りのらせん、又は左回りのらせんのどちらかが軸の部分に形成されていますが、NejiLawのボルトは、右回りのらせんと左回りのらせんが両方、互い違いになるように形成されています。
この構造により、NejiLawのボルトは、右回りのナットも左回りのナットも、どちらも螺合することができるのです!!
②右ねじナット、左ねじナットの両方を用いる締結構造
①でご紹介した特殊構造のボルトに、右回りのナット&左回りのナットの両方を螺合します。右回りのナットと左回りのナットは、締まる方向と緩む方向とが真逆になりますね。更に、ナット同士は連結構造を取っており…
例えば、一方のナットに、緩み方向に回る力がかかったとき、他方のナットには、締まる方向に回る力がかかる構造になっています。
この構造は、同じ方向にねじ切りがあるナット2つを使っても実現せず、右回り、左回りのナットを一組として用いることで初めて実現することは、上の図から分かると思います。
特許紹介
さて、冒頭でもご紹介させていただいた通り、この技術は特許出願され、既に登録されています!この大発明がどのような内容で特許で守られているのか、実際に見ていきましょう!
番号:特許4663813号
発明の名称:両ねじ体及び雌ねじ体
出願人:道脇 裕
出願日:2009.2.20(優先日は2008.2.20)
ステータス:登録
早期審査対象案件
さっそく請求項1の内容を見てみると・・・多くの構成要件が含まれており、分量としても結構なボリュームです。
そこで、請求項1の内容を①~⑦の7つのポイントに分け、図面とともにチェックしたいと思います。まずは前半部分のポイント①~⑤です。
右回転と左回転の螺旋が、互い違いになるように形成されています。(⇒図のポイント①②④)条(ねじ山)については、右回転と左回転の螺旋を兼用した構造となっているのですね!(⇒図のポイント⑤)ボルトの軸についても、円柱or円筒であることという規定があります。(⇒図のポイント③)
続いて、後半部分のポイント⑥~⑦です。
軸方向から見た断面形状が楕円であることも、発明のポイントとなっています。
まとめ
このようにネジロウのネジは特許で守られており、その特許の内容は多くの構成要件からなるものでした。もともとネジは古くからあるもので、長い歴史を持つものですね。さらにネジの構成がシンプルであることから、既存のネジとの差別化を権利化することはいくつもの工夫が必要だったのではないでしょうか。
道脇裕氏の発明はネジ以外にもユニークであっと驚くものがありましたので、また別の記事でご紹介したいと思います!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
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