身近な商品・サービスと知財のページへようこそ!
今回は、気軽に立ち寄れる日本のドーナツチェーンで有名な『ミスタードーナツ』(以下、ミスド)に関する知財をご紹介しながら、ドーナツ専門店で唯一の全国チェーンのポジションを確立する歩みを振り返る記事になります。
『ドーナツはどのように知財で守られているの?』
『競合他社の参入に対してミスドが打ち出した戦略とは?』という方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2024年1月時点での調査に基づいて執筆しております。
目次
ミスドの沿革
説明するまでもないほど有名な『ミスド』。お掃除事業で有名なダスキンが、外食事業としてミスドを展開しております。ダスキンの創業者、鈴木清一が渡米、ミスタードーナツ・オブ・アメリカとの事業提携を決断し、1971年に日本で第1号店がオープンしました。もう50年以上にもなるのですね。
初代からずっとミスドを支えてきた定番メニューであるドーナツから…
登場後、大人気となり看板メニューとなったドーナツまで、店頭には豊富な種類のドーナツが並びますね。
ドーナツに限らず、マフィンやパイ、麺類も揃い、おやつだけでなくモーニングやランチ等のシチュエーションにも利用される存在になりました。
50年以上、当たり前のように私たちの身近な存在であるミスド。思い返してみると、ミスドオリジナルキャラクター『ポンデライオンと仲間たち』が登場したり、期間限定のコラボドーナツが話題になったりと、ブランディングに注力し、時代とともに変化する様子が窺えますね。
また、50年の歴史の中には、ミスドにとっては脅威となる競合が日本に上陸したこともありましたし、コンビニがドーナツ業界に参入を試みたこともありました。
このような局面をピックアップしながら、知財の関わりを見ていきましょう。
大人気ドーナツ『ポンデリング』と知財
ミスドの看板ドーナツとして、『ポンデリング』を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?毎年、人気ランキングで、ポンデリングが上位に上がっているようです!
参考:ミスドの人気ランキング https://macaro-ni.jp/107666?page=4
すっかりミスドの顔といっても過言でない『ポンデリング』ですが、ポンデリングは、創業時からあったメニューではなく、2003年に新登場したドーナツです。
画像引用元:ミスド公式サイト https://www.misterdonut.jp/m_menu/donut/dpd01.html
当時、ドーナツには珍しいもちもち食感と、お花のモチーフにしたような形状がとても印象的だった記憶があります。このように商品自体ももちろん人気が爆発する要素がたくさんあるのですが、ポンデリングが人気商品になるのを後押しした仕掛けもあったような記憶がありますね。見てみましょう。
ミスドオリジナルキャラクター『ポンデライオンと仲間たち』
ライオンのたてがみがポンデリングになっているキャラクターです。
画像引用元:ミスド公式サイト https://www.misterdonut.jp/enjoy/pondelion/profile.html
確かにライオンであることは間違いないのですが、全体としてみるとドーナツがしっかり目立って認識できるデザインになっているのもポイントですね。
仲間たちもそれぞれミスドのドーナツをモチーフにしたキャラクターです。ポンデライオンをはじめとするキャラクターは、全て商標登録されています。ポンデライオンは、先行して標準文字でそのネーミングが商標出願されており、のちほどキャラクターが商標出願されていました。
ポンデラオイオンのキャラクターが出願されたタイミングで、仲間たちも一匹ずつ出願されていました。
キャラクターが大集合した商標も発見しました。
ポンデリングの発売された翌年の2004年には、ポンデライオンをモチーフとしたグッズ販売が開始されていました。商標出願のタイミングと合っていますね。
それまで、ミスドのグッズといえば、ピングーやセサミストリートなどがモチーフとなったものが多かった記憶があります。当時人気のキャラクターではあったものの、ドーナツには直接結びつかないキャラクターでした。
大人気商品、ポンデリングに直結するキャラクターであるポンデライオンの登場は、ミスドのブランディングに大きく貢献したことでしょう。
バリエーション豊かなトッピングと商標登録
ポンデリングは、ドーナツ自体の味がシンプルであるゆえ、色々なトッピングを加えやすいドーナツであることも特徴です。季節限定も、定番商品も、数々のバリエーションの商品が登場しました。
商標登録を調べてみると、全てのドーナツが商標出願・登録されている状況でない中、ポンデリングシリーズの商標出願は比較的多い印象でした。特に、2010年代後半は、集中した商標出願が確認できました。
ミスドの主力商品であるポンデリング、メニューを広げることにも注力している様子が窺えますね。
競合がドーナツ市場に参入?そのとき、ミスドの対抗策は?
ドーナツ専門店で唯一の全国チェーンであるポジションを確立し、日本への出店から50年以上も変わらずドーナツを販売し続けるミスドですが、時には脅威となる競合他社によるドーナツ市場への参入がありましたね。
具体的には、クリスピードーナツが日本に上陸して、行列の絶えない現象が起こっていたこと(2006年以降)や、日本のコンビニで、レジの横にドーナツが置かれ始めたこと(2014年頃)が印象に残っています。特に、当時の日本におけるコンビニの店舗数とミスドの店舗数を比較すると言うまでもなく、ミスドにとってコンビニは特に脅威だったのではないでしょうか。
そのときにミスドはどんな戦略を立て、コンビニとの差別化を図っていったのか、知財とともに見てみたいと思います。
コンビニには置かれない商品を充実
1つ目として、コンビニドーナツにはないような差別化商品の開発に力を入れた様子が伺えます。例えば、2016年に発売された『クレームブリュレドーナツ』。人気スイーツであるクレームブリュレの味わいをドーナツで表現した商品です。仕上げには表面をガスバーナーで丁寧にあぶることで、香ばしさを楽しめるドーナツになっているのだとか。
参考:ミスドニュースリリース https://www.misterdonut.jp/businessinfo/news_release/pdf/nr_180927_01.pdf
こちらはドーナツの形状が意匠登録されています。ミスドのドーナツで意匠出願・登録されている商品はかなり限られており、クレームブリュレドーナツはその限られた中の1つです。
味違いのメニューが関連意匠登録出願されていました。メニューのバリエーションは、関連意匠制度を活用していますね。
また、毎年秋の始まりが楽しみになる『さつまいもド』。
画像引用元:ミスドニュースリリース https://www.duskin.co.jp/news/2023/pdf/230824_01.pdf
2019年に始まり、毎年秋に期間限定で発売されています。ネーミングもインパクトがありますが、まるで本物のさつまいもを食べているような味が大人気となっています。発売当初から、シリーズ化を見込んでいたのでしょうか、こちらも意匠登録されていました。
様々な企業・商品とコラボ『misdo meets』シリーズの展開
もう一つ、ミスドが2017年から注力しているのがこちらの『misdo meets』。
「misdo meets」とは、お客様がミスタードーナツを通じて様々な企業や商品と出会い「最高においしい商品・価値」や「ワクワクする気持ち」を提供するという、ミスドの商品開発テーマだそうです。 商標登録されていました。
これまで、宇治茶専門店「祇園辻利」や、GODIVAなど、有名な企業とのコラボで注目を集めてきました。有名ブランドの味を、ミスドのドーナツに織り込む。実現できるのは、ドーナツ専門店ならではの強みではないでしょうか。
現在(2024.1)は、GODIVAとのコラボ商品を販売中です。毎年、チョコレートブランドとのコラボを見かけると、もうすぐバレンタインだなという気分になります。
画像引用元:ミスド公式サイト https://www.misterdonut.jp/m_menu/new/240111_godiva/
まとめ
ずっと変わらない定番商品に安心感をもらう一方で、新しい取り組みや季節限定商品にワクワクさせてもらえるミスド。50年以上もドーナツ市場の中心であり続ける企業努力を知財の観点から覗くことができました!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
身近な商品・サービスと知財
オンボードアイピー
知財の楽校 公式メールマガジン
オフィシャル・ライターのご紹介
作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
https://bambooincubator.jp/members/kanada_yumiko
一言
雑談レベルで知財のことを楽しく知ってもらえたら。そんな思いで、日々執筆をしています!
SNS
X(旧Twitter)
https://twitter.com/omochi_benrishi