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今回は、『メルカリ』の金融部門として設立された『メルペイ』のサービスにまつわる特許をご紹介いたします!
『なぜメルペイが作られたの?』
『メルペイのサービスに関連する特許が出願されているの?』 という方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2024年2月時点での調査に基づいて執筆しております。
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(気軽に出品できる仕掛けづくりと知財)
メルペイのミッションから浮かび上がる『信用度』
メルペイが設立されたのは、2017年のこと…
この頃の日本は、QRコード決済がちょうど普及し始めるタイミングだった記憶があります。
メルカリは、そんな世の中の動向をいち早くキャッチし、QRコード決済周りの事業を始めたのだろう。今まで私はそんな認識を持っていたのですが、最近、興味深い記事を見つけました。
メルペイは、一人でも多くの人が新たな価値を生み出すために、必要な「信用」を創造したいと考えています。よりわかりやすく言い換えると、「お金がなくても使えるようなメルカリ」を作りたいと考えています。(中略)
お金に代わる信用を創造することは、この前提条件(お金を持っていること)を必要としない画期的なものになると、私たちは確信しています。(中略)
一人でも多くの方が価値の交換を行い、あまねく人がやりたいことを実現したり、欲しいものを手に入れられる、そういうなめらかな社会を作りたいと私たちは考えています。
引用元:『お金がなくても使えるメルカリ』は実現できるか?
なるほど。
メルペイが創りたいのは、信用を創造することで価値交換が可能となる世界観。
欲しいものを手に入れる(=価値交換の)手段は、必ずしもお金に限られないということですね。
しかし、『信用』とはやや概念的な印象があります。メルペイは、それをどのように具体化して定義しているのでしょうか?
今回の記事では、上記でご紹介したメルペイのミッションに関連すると思われる特許出願を調べてみました。下記の検索条件でヒットした特許文献の中から、気になる内容のものをピックアップしてご紹介しますね。
◆出願人がメルカリである文献
◆特許請求の範囲に『信用』又は『与信』のワードがある文献
『信用度』の蓄積により価値交換を加速(特許文献①)
では、早速1件目の特許のご紹介です!
特許番号:特許6483898
発明の名称:信用度算出方法、情報処理装置及び信用度算出プログラム
出願人:株式会社メルカリ
出願日:2018.7.31
ステータス:登録
こちらの特許は、『ユーザに対する信用度の算出方法』に関して権利化されています。
信用度の算出方法として、ユーザがメルカリのプラットフォーム上で商品を売買する際の情報から算出する考え方が記載されています。分かりやすいように図にしてみます。
例えば、ユーザが商品を『売る側』の場合は・・・
出品した商品の種別、商品が出品禁止対象でないか、売上金額、相場価格との差などの情報に基づいて信用度を算出します。
また例えば、ユーザが商品を『買う側』の場合は・・・
購入した商品、支払い金額、購入までに閲覧した商品の属性や数に基づいて信用度を算出します。
ユーザが商品を売る側の立場においての信用度と、買う側の立場においての信用度との両方を算出できる点は、より信用度を適切に評価できるポイントにもなりますね。
さらに、信用度が高く評価されたユーザには、例えば下記の特典が付与されると記載されています。
- 出品ページの優先的な表示
- 出品手数料の割引
- 購入がキャンセルされた場合の支払金額の補填
※いずれも明細書段落【0192】に記載
冒頭でご紹介した、『お金がなくても価値交換ができる世界』とまではいかないものの、信用度を蓄積すればするほど、価値交換を加速させることができるというメルペイの世界観が明細書から伝わります。
早期タイミングでの与信枠決定(特許文献②)
続いて、2件目の特許のご紹介です!
特許番号:特許7299713
発明の名称:プログラム、情報処理装置、及び情報処理方法
出願人:株式会社メルカリ
出願日:2019.2.6
ステータス:登録
こちらの特許は、『与信枠の決定方法』に関して権利化されています。
より具体的には、ユーザによる出品処理に関する履歴から、その出品商品に対する与信枠を決定するというもの。ここで、出品処理というのは、例えばメルカリなどの商取引プラットフォームを指します。さらに、その与信枠に基づいてユーザに対して融資が可能になります。
具体的には、下記の図のような要素が決定される与信枠を左右します。
このような仕組みによって、ユーザが資金を受けるタイミングをより早めることができます。具体的には、出品商品に対して与信枠が決定されるので、出品商品が売れる前に与信枠を確保できます。先の文献(特許文献①)でご紹介した信用度の獲得には、ある程度の取引実績が必要になるので、所定の期間を要します。しかし、本特許の仕組みであれば、商品を出品することにより与信枠が追加されるので、価値交換が早期タイミングで可能になるのです。(明細書段落0053)
まとめ
今回はメルペイの気になる記事の内容から、メルペイの創りたい世界観が読み取れる特許をピックアップしてご紹介しました。
数年前、メルカリの決済事業への進出には、非常に興味深いストーリーが隠れていたのですね!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
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