身近な商品・サービスと知財のページへようこそ!
株式会社delyが2024年12月、東証グロース市場へ新規上場しました。
株式会社delyと聞いて、皆さんが一番に思い浮かぶサービスはなんですか?
私は、料理レシピ動画を提供している「クラシル」です。

しかし、料理レシピ動画が盛り上がったのは、少し前のことのように思います。このタイミングでのdelyの上場が気になって、色々調べてみました。すると・・・
私の知らない間に、料理レシピ動画での基盤を活かしつつ、次の領域へと事業が拡大しておりました!
中でも興味深かったのが、販促・営業事業である「クラシルリワード」というサービスの提供です。本記事では、「クラシルリワード」の魅力を知財の観点から掘り下げていく内容です。
※本記事は、2025年3月時点での調査に基づいて執筆しております。
クラシルリワードとは?
クラシルリワードは、移動・買い物・レシート撮影でポイントが貯まるお得な『ポイ活』アプリです。
ポイ活とは?アプリ利用を介して、楽しみながらポイントを貯めていくものです!例えば、通勤や買い物など、普段の移動距離に応じてポイントを獲得できます。
また、『レシチャレ』といって、対象商品を購入してレシートを撮影することで、追加のポイントが獲得できる機能もあります。他にも、電子チラシをチェックすることによりポイントを獲得できます。
貯めたポイントは、ギフト券や他のポイント等に交換可能です。節約したい人や、楽しみながらポイントを効率的に貯めたい人にぴったりのアプリですね。私もさっそくダウンロードしてみましたよ!

(画像は筆者のアプリ画面)
アプリに触れてみると、楽しくポイ活できそうな仕掛けがいろいろとありそうです。
しかし、消費者ユーザだけでなく、食品・飲料メーカーや、スーパーなどの小売店にとっても加盟のメリットがたくさんあります。例えば、メーカーから新発売される「ドレッシング」の宣伝広告から消費者に購入されるまでを例として見てみましょう。
ユーザー、メーカー、スーパーのメリットを下記の図に簡単にまとめました。

(画像は筆者作成)
★メーカにとってのメリット
新商品であるドレッシングを、アプリを介してPRすることにより、消費者(=アプリユーザ)の目に触れる機会が増えます。例えば、消費者によるアプリ内のチラシチェックもポイント獲得対象になっているので、アプリを介して消費者がドレシングを認知する機会を得やすい仕掛けづくりがなされています。
また、単なるPRにとどまらず、購買データを得ることができます。新商品の売れ行きは好調か、また、ドレッシングを購入した客層はどのようなタイプが多いのか、などといった傾向を分析することができます。このあたりはテレビCMと差別化できそうですね。
★小売店(スーパー、ドラッグストア等)にとってのメリット
クラシルリワードに加盟することで、ポイントが獲得できる対象店となります。つまり、アプリを利用するユーザがドレッシングを買うために、そのお店に来店してくれることに繋がります。きっと、ユーザーはドレッシング以外の食材や日用品もついで買いしてくれることでしょう。小売店の売上増加が期待できます。
メーカー、小売店、ユーザーの三者のそれぞれが嬉しくなる循環ができていますね!
このような魅力的なクラシルリワードに関する特許出願を見つけました。特許の内容を読んでみると、クラシルリワードの未来を少し覗くような内容も見られましたので、ご紹介したいと思います。
特許紹介その1:クラシル(料理レシピプラットフォーム)との連携
まず気になったのはこちらの特許。クラシルリワードと、クラシルを連携させたサービスに関するアイデアが特許になっていました。
特許第7630025号
発明の名称:情報処理装置及びプログラム
出願人:dely株式会社
出願日:2024.02.02
ステータス:登録
レシートの情報を読み込むことによりユーザが購入した食材や購入店舗の情報が分かるため、購入食材を用いたレシピと、他の食材の購入を提案してくれるといったものです。さらには、どの店舗で購入するとよいか、店舗情報まで提案してくれるといったアイデア。

特許第7630025号図面【図5A、図5D、図5F】より引用
食事を作る際には買い出しによって食材等を調達することが通常です。レシピに出てくる食材を、どの店舗に買いに行くとポイントが獲得できるのか。このような、ユーザによる献立決めから買い出し、調理まで、クラシルとクラシルリワードが連携することにより一気通貫で携わることができるのは、食品の小売業界・そしてレシピ業界双方にとって、大きな変革となるのではないでしょうか?
特許紹介その2:消費者の徒歩移動でポイントゲット!の秘密
冒頭でご紹介した通り、クラシルリワードの『ポイ活』においてポイントを獲得する手段のひとつに、「移動距離を記録する」ことがあります。
先ほどのドレッシングを例にすると・・・
「ポイント獲得の対象店舗である〇〇スーパーでドレッシングを購入すると、ポイントが貯まる。〇〇スーパーまで行くのはちょっと面倒だけれど、自宅から〇〇スーパーまで歩いた移動に対してもポイントが貯まるから、散歩がてらいってみよう!」となるわけです。
さすがクラシルリワードです。細部まで導線が徹底されていますね!
この、移動と報酬の仕組みに関するアイデアが、特許出願されているのを発見しました。
特許第7568877号
発明の名称:情報処理装置及びプログラム
出願人:dely株式会社
出願日:2024.02.02
ステータス:登録
請求項1に書いてあることを大まかにまとめると、下記のようになります。
①移動距離に応じて報酬をゲットする。⇒搭 載済み
②ユーザの位置情報が所定範囲内である場合、報酬が優遇される⇒ 今後?
③所定範囲内に位置情報があると判定されて所定時間以内のみ、優遇期間として報酬が優遇される ⇒今後??
※ここでの「所定領域」とは、所定店舗がある位置から所定距離内の領域を指します(請求項4、明細書段落0038)。
例えば、レシチャレで指定されている店舗の近くにユーザの位置情報がある場合に、より多くのポイントが獲得できます。さらに、その店舗周辺に滞在する(=お買い物を想定?)ことによりポイントを獲得できるといった、ボーナスポイントのようなイメージでしょうか!
これにより、対象となる店舗まで移動する動機付けをユーザに与え、ユーザによる店舗までの移動を促進することができますね。例えば、ドレッシングはA店舗で購入し、別の調味料はA店舗から徒歩で移動可能なB店舗で購入する、といった動機づけを与えることもできそうです。

特許第7568877号図面【図5】より引用
まとめ
いかがでしたでしょうか?
delyがレシピ事業をメインとしていたのは、もう何年も前のこと。今は、小売業界の販促・PRに事業を拡張させ、かつてのレシピ事業とも連携させながら、今後も大きく変化を遂げていくのでしょう。
delyは2023年から、ライブ配信者などのサポートを行うクリエイターマネジメント事務所の運営も行っており(「LIVEwith」運営のENLOOPを子会社化)、一見、これまでのクラシルとは全く異なる事業も行っております。
そんな目が離せないdely。今後も時々、動向を追っていこうと思います!続編として、また記事にさせていただくときが来るかもしれません。
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!

身近な商品・サービスと知財

オンボードアイピー

知財の楽校 公式メールマガジン
オフィシャル・ライターのご紹介

作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
https://bambooincubator.jp/members/kanada_yumiko
一言
雑談レベルで知財のことを楽しく知ってもらえたら。そんな思いで、日々執筆をしています!
SNS
X(旧Twitter)
https://twitter.com/omochi_benrishi