身近な商品・サービスと知財のページへようこそ!
今回は、前回に続き、『冷凍餃子』に着目した記事です。前回は各社比較として、大阪王将と味の素の特許を比較しました。
本記事では、冷凍餃子に関する大阪王将(出願人:株式会社イートアンドホールディングス)の特許出願をピックアップし、冷凍餃子に関する技術の進化を見てみる記事です。
『冷凍餃子のどんな技術を特許出願しているの?』 『特許情報から技術変遷を知りたい!』 という方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2024年3月時点での調査に基づいて執筆しております。
冷凍餃子特許シリーズのもう一記事はこちら
(味の素と大阪王将の比較)
蓋いらず!が売りの冷凍餃子
大阪王将の冷凍餃子を使ったことのある方はご存知だと思いますが、フライパンに凍った餃子を並べて焼くだけでおいしい餃子が完成します。水も油もいらないことはもちろん、フライパンの蓋も不要なのが本当に手軽です!
画像:株式会社イートアンドWebサイトより引用
なぜ、水も油も蓋もないのにきれいに餃子が焼けるのか?その秘密は、餃子の皮部分に含まれる糖類の種類と割合、また、皮部分に含まれる水分の割合にあるようです。
番号:特許6852194号
発明の名称:点心類の皮、点心類、冷凍点心類、及び点心類の皮の製造方法
出願人:株式会社イートアンドホールディングス
出願日:2019.8.16
ステータス:登録
早期審査対象案件
現在登録になっているこちらの特許の、請求項1で規定されている事項を見てみます。
皮に含まれる糖の種類及び割合、さらに水分量の割合(調理のための開封時、材料の混錬時)について請求項1で規定されています。
これにより、水なし、油なし、そして蓋なしに餃子が焼けることが実現されました!
課題を解決したことによる、新たな課題
さて、上記の技術により、蓋なしでも餃子が焼けるようになった一方で、蓋がない状態で調理をすることについて、新たな課題も生じます。それは…
『フライパンから油跳ねが生じる。』
例えば、コンロの周りが汚れたり、油跳ねにより熱い思いをする可能性もあります。
そんな、新たに生じた課題をさらに解決するアイデアについても、大阪王将から特許出願されていました!
番号:特開2022-113671
発明の名称:油跳ねしにくいバッター液
出願人:株式会社イートアンドホールディングス
出願日:2022.8.4
ステータス:拒絶査定不服審判
こちらの特許出願では、バッター液の全重量に対する油の重量割合と、乳化剤の重量割合と、穀物粉の重量割合とが規定されています。
※油ハネ評価、焼き上がり評価の詳細は、明細書段落【0035】【0036】に記載がありました。
明細書の記載によると、バッター液に含まれる乳化剤が、油跳ねを適度に防止する役割を担っています(明細書段落【0022】)。その乳化剤と、餃子の羽根の形成に必要な穀物粉と、餃子を焼成する際の油分とがそれぞれどの割合であれば焼き上がりもよく、油跳ねも抑制されるのか?各パラメータを変化させて実験した結果が記載されていました。
まとめ
今回は大阪王将の冷凍餃子を取り上げ、課題を解決したことにより新たに課題が生じる例を見てみました。上記の例は、蓋が不要になったことにより油跳ねが生じるという、とても分かりやすい内容でしたね。
課題を解決することにより、新たな課題が生じるこのようなサイクルは、実際の研究開発現場でもよく見られ、このように技術が進歩していくのではないでしょうか。特許出願情報を出願年順に並べると、その出願人(例えば、企業)の技術変遷を追うことができますね。
新たな課題の周りには、特許出願のアイデアが隠れているかもしれませんね。ぜひ意識して探してみてください!
顧客ニーズから常に新たな技術課題を追う姿勢は研究開発において当然重要ですし、特許実務の観点でも課題の捉え方を工夫することは広く強い権利を仕立て上げる上で肝になるものです。それを身近な事例を通して感じられる記事でしたね!ありがとうございました!
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
身近な商品・サービスと知財
オンボードアイピー
知財の楽校 公式メールマガジン
オフィシャル・ライターのご紹介
作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
現所属先
弁理士法人IPX
https://ipx.tokyo/member/yumiko_kanada/
BAMBOO INCUBATOR 専門家メンバー
https://bambooincubator.jp/members/kanada_yumiko
一言
雑談レベルで知財のことを楽しく知ってもらえたら。そんな思いで、日々執筆をしています!
SNS
X(旧Twitter)
https://twitter.com/omochi_benrishi