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今回の身近な商品・サービスと知財のテーマは、皆大好き!大阪王将の冷凍餃子です。株式会社イートアンドフーズが製造されている大阪王将羽根つき餃子は、餃子が12個も入って(本コンテンツ制作時点の大阪王将公式通販本店に記載の価格で)何と351円という言わずと知れた大人気商品です。
参照元:大阪王将公式通販本店 https://o-ohsho.jp/products/detail.php?product_id=473
パッケージ裏に作り方や食べ方の説明がございますが、多くの方が魅力を感じるのは以下の2つだと思います。1つ目は油・水・蓋までも使う必要がない究極手間いらずの調理法という点、2つ目はパリっと美味しい羽根が出来上がるという点です。
パッケージを開けて中身を見てみると、下記の写真のような状態になっています。上半分が餃子本体ですが、下半分に何やら分厚い白い層があります。実はこれこそが、油・水不要、パリッと美味しい羽根を実現している層です。こちらはバッター液と呼ばれるもので、特許にもなっている技術です。技術に関する文献は世の中に沢山ありますが、特許権というのは事業を優位にするために敢えてお金を掛けて取得するものですので、市場やお客さんを意識した技術内容を読み取ることができます。そこで、こちらの大阪王将の冷凍餃子に関する特許を見ていきましょう。
下記が特許出願明細書に記載されている図面です。大阪王将の餃子の製造の流れがよく分かります。まずは、餃子を成型し、トレイに充填します。次に、餃子羽根形成剤、先程お見せしたバッター液を充填します。そして最後に、凍結・包装して商品となります。どうやら重要なポイントは2点あるそうです。
バッター液は、水、油要らずの立役者ということで、これらが原料として仕込んでありますが、その他にも穀物粉と乳化剤も含まれており、これらの成分比が1つ目のポイントであるようです。
2つ目のポイントは、まさに先程ご説明した製造過程にあり、バッター液に加熱が施されていない未加熱の状態でトレイに充填されていることが重要なようです。事前に火が入っているとバッター液が糊化している状態になってしまい、調理時に上手くフライパンに溶け拡がってくれないような粘度になります。
大阪王将の冷凍餃子には素晴らしい技術が詰まっていることが分かってきましたが、ここで好奇心が湧いてくるのはやはり、バッター液の過去、現在、未来への技術の潮流です。そういう時は、特許出願の流れを追えば見えてくるものがあります。さて、読者の皆様は、冷凍餃子と言えば、大阪王将だけでなく味の素さんのものも頭に浮かぶのではないでしょうか。味の素さんも特許を保有しており、先程ご紹介した大阪王将(イートアンドフーズ社)の特許の先願に当たります。こちらを読めば、過去からの技術の流れを読み解くことができます。
上述した通り、バッター液の役割について大阪王将は、パリッと綺麗な羽根を形成することと捉えていました。一方で実は、先願側の味の素の特許では、飽くまで油や水として餃子の焼き面の焼き具合を均一化する目的であったことが記されております
もう少し詳しく読み解いて技術を追ってみます。味の素の冷凍餃子の製造の流れは、まず生の餃子を成型してトレイに入れ、そこにバッター液を充填し、餃子とバッター液が一体となったものを加熱調理し、冷凍するものであったようです。
一方で大阪王将の冷凍餃子の製造の流れは、餃子を成型した後、先に加熱してトレイに入れてから、バッター液を充填し、冷凍します。
違いは何か…そうです。味の素の方はバッター液も餃子とまとめて加熱済であるのに対し、大阪王将の方は敢えてバッター液は未加熱にしているという点です。
理由は冒頭にもご説明した通り、どうやらバッター液を事前に加熱してしまうと糊化してしまうため、ご家庭での調理時にフライパンに綺麗に溶け拡がってくれないようです。だからこそ、加熱の工程を前に持って来た訳ですが…
さて、この発想は、バッター液を単に油や水として焼き具合を均一にするという視点から見続けているだけで、生まれてくるものでしょうか。顧客ニーズを読み取り、バッター液に綺麗な羽根をつくる役割を担わせたいという新たな技術課題に着目したからこそ生まれた発明なのではないでしょうか。このように、技術にブレークスルーを起こすには、新たな視点での 「課題」 が大切ですし、特許についても課題の捉え方を工夫することで広く強い権利になることが多いです。これが、この身近な知財事例から楽しく学べる重要なポイントです。
最後に余談です。実は、大阪王将の特許の更に後願として、味の素も次なる特許出願を行っています。このように時系列で特許を見ていけば、未来に向かっての技術も追っていくことができます。
特許は、J-PlatPatを使えば、簡単に調べて読むことができます。興味を持たれた方は是非、色々調べて読んでみてください。
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