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今回は、回転寿司チェーンストアで有名な『くら寿司』にまつわる特許をご紹介いたします!
特に、くら寿司の代名詞ともいえる『ビッくらポン』の特許に着目していきますよ!
『飲食店で提供されているサービスが、特許出願できるの?』
『大好きなビッくらぽんの秘密を知りたい!』という方は、是非ご覧ください。
※本記事は、2023年12月時点での調査に基づいて執筆しております。
ビッくらポン!とは?
まず、ビッくらポンって何?という方に向けて、簡単にくら寿司のサービスをご紹介します。
利用客は店舗でお寿司を食べ、食べ終わったお皿を備え付けの投入口に投入していきます。このお皿が5枚、投入口に投入されたとカウントされると、各座席に備え付けのモニターにくじ引き画面が表示され、『あたり』が出れば景品ゲット!座席上部にカプセルが出てきます。
引用元:くら寿司公式サイト
(https://www.kurasushi.co.jp/author/005014.html)
しかし、くら寿司のメニューの中には、お皿が投入口に入らないメニューもあります。実際に利用したことのある人はピンとくると思いますが、例えば、ラーメンやうどんなどですね。これらは注文しても、ビックらぽんのカウントの対象外になってしまうのか?と思ってしまいますが、この懸念もカバーしているのがくら寿司のサービスです!実は、自身のスマホから注文した場合に限り、これらのメニューを注文した場合もビッくらポンのチャンスがあります。メニューのうち「スマホでビッくらポン対象商品」と書かれたメニューを注文すると、そのメニューの金額がポイントとして加算され、550円分のポイントがカウントされたタイミングで、ビッくらポンにチャレンジできるのです!
引用元:『スマホdeくら』
(https://www.kurasushi.co.jp/epark/pdf/sp_de_order.pdf)
ビッくらポン!の特許出願紹介
今回紹介する特許出願は、『スマホでビッくらポン!対象商品』のビッくらポンを実行する部分に関するものです。ビックらポンに関するどの部分の処理が発明として特許出願されているのか、見てみましょう!
特開2021-015529
発明の名称:情報処理装置、端末装置、及び第二端末装置
出願人:くら寿司株式会社
出願日:2019.7.16(スマホ注文システム開始日でした!)
ステータス:拒絶査定(2023.12時点)
請求項1は、情報処理装置に関する内容が記載されています。
引用元:特開2021-015529の図1
ビッくらポン装置(明細書中では景品出力装置4)と、利用者の端末と、ネットワークを介して接続されているのが情報処理装置です!
続いて、情報処理装置の処理の流れ(発明の内容)を見ていきましょう。
お客さんのスマホ等から受け付ける注文情報に、座席を特定するための情報が紐づいていて、ある座席に対する注文情報の合計金額が、ビッくらポン開始条件(たとえば、550円以上の注文)に合致するかを判断し、条件に合致する場合は、ビッくらポンをスタートする、という構成になっています。
これだけだと、スマホでビックらポンならではの特徴がいまいち分かりづらいですね。
更に【請求項2】を見てみると、このような記載がありました。
前記報償条件は、2以上の商品のうちの予め決められた1以上の商品の注文情報のみに関する条件である請求項1記載の情報処理装置。
これを分かりやすく書くと、『全てのメニューのうちのいくつかが、スマホでビッくらポン対象商品として予め決められている』ということです。
明細書では、対象商品の具体例として麺類及び飲料類の商品が、報償条件に関係する注文情報(=ビッくらポン対象商品)【0065】であることが書かれています。まさに、スマホでビッくらポンの特徴を表していますね。
『スマホでビッくらポン』は、元々提供されていたビッくらポンサービスの中で『投入口に入らない一部のサイドメニューが対象とならない』という課題を解決するために、さらにひと工夫加えたサービスです。くら寿司のこのひと工夫が、しっかりと特許出願されていました。
ビッくらポン!の未来 ~テイクアウトでもビッくらポン!可能に?~
さらに調べてみると、興味深い特許出願を見つけました!
『お持ち帰り用ロッカーを利用してテイクアウト商品を受け取る際にビッくらポンゲームが実施されるサービス』について出願されています。
くら寿司もいつか、お持ち帰り用ロッカーができるの?!
さらに、テイクアウトでもビッくらポンができるの!?
今後のサービスにも目が離せませんね。早速特許出願の内容を見てみましょう。
公開番号:特開2022-137640
出願日:令和3年3月9日
出願人:くら寿司株式会社
ステータス:未審査請求
早速、この特許出願の請求項(主に請求項1)の内容を簡単に図で表してみました。
図に登場する制御装置は、ユーザ端末を介して注文情報を受信し、注文情報に応じて決済処理をします。また、注文情報に応じたコードを取得して、ユーザ端末へ送信します。ゲーム装置は、このコードを受け取ると、ビッくらポンを実施します。
一つ、この『コード』のやり取りがポイントに見えますね。このコードには、例えば、注文番号、(商品の)価格、価格に応じたビッくらポンの実施回数などの情報が含まれているのです。(【0320】)
請求項の内容だけでは、ぼんやりとしていまいちイメージがわかないかもしれないので、特許公開公報に書かれている、実施例レベルの解像度で紹介したいと思います。
※公開公報の明細書には、複数の実施例が記載されていますが、本記事では持ち帰り用商品受け取りロッカーを使った処理を例に挙げて記載します。
まずは、<ユーザから注文を受け付けるときの処理>について説明します。
上の図の①~④の処理(番号は筆者が説明の便宜上つけたもの)について、それぞれ処理の内容を見てみます。
①注文を受信
制御装置は、ユーザから入力を受け付けた持ち帰り商品の注文情報を、ユーザ端末を介して受信します。
②決済
制御装置は、受信した注文内容に応じて決済処理をします。
③④コード取得&コード送信
決済が正常に行われたことを契機に、制御装置は『コード』を取得して、ユーザ端末に送信します。上にも書いたように、コードとは、注文番号、価格、価格に応じたゲーム回数の情報が含まれています。
ユーザ端末を所有する利用者は、制御装置から受信したコードをキーとして、自身の注文した商品を受け取ることができます。詳しくは、<商品引き渡し時の処理>のパートで見てみましょう。
さて、いよいよ利用者の注文した商品が出来上がり、受け取り時間となりました。利用者は指定された受け取り時間に来店します。
⑤~⑨の処理について、それぞれ処理の内容を見てみます。
⑤⑥コード出力指示&コード出力(現請求項1では限定なし)
制御装置からユーザ端末に対してコードを出力する指示をしたことに応じて、制御装置は、ユーザ端末から『コード』を受け付けます。ここで、このコードは、注文時に制御装置からユーザ端末へ送信したものです。例えば、二次元コードがユーザ端末の画面に表示されて、制御装置側が読み取るなどがその一例です。
⑦商品引き渡処理(現請求項1では限定なし)
ユーザ端末からコードを受け取ると、顧客へ商品引き渡し処理を行います。例えば、ロッカーへの格納場所を示す貯蔵庫IDがコードに含まれていて、対応するロッカーの扉をオープンにする指示を制御装置から送信します。お持ち帰り商品用ロッカーを介して受け渡しをする例です。
⑧<ゲーム装置>コード受け付け
さあ、ビッくらポン開催までいよいよあと少しになってきました!ここからはゲーム装置が主人公になります。ロッカーの扉をオープンにする指示を送信したことを契機として、ゲーム装置が制御装置からコードを受け付けます。具体的には、コードにはゲーム回数を示す情報が含まれています。
⑨<ゲーム装置>ゲーム制御
ゲーム制御処理をします。⑧で受け付けた『コード』の中に含まれるゲーム回数に応じて、ビッくらポンを実施します。
このシステムによって、注文にされた商品を持ち帰る場合であっても、ゲームを店舗で行えます。【0422】
さらに、上で紹介したように持ち帰り商品用ロッカーを使用する場合は、商品を持ち帰るためにロッカーから取り出すことにより、(利用者は)注文に応じたゲームを、店舗で行えます。【0423】
持ち帰り商品用ロッカーの隣にビッくらポン装置が並んでいる未来がいつかやってくるのでしょうか…!楽しみですね!
※補足:本特許出願はまだ登録前なので、請求項の内容は現状の内容から変わる可能性があります。
オモチさんが執筆される身近で楽しい記事をこれからもご期待ください!
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作家名
金田 有美子(通称オモチ)
略歴
弁理士として特許事務所で働く傍ら、身近な商品・サービスと知財をテーマに記事執筆をしています。企業知財経験もあります。
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