本記事は知財系 Advent Calendar 2020にエントリーして書いたものです。12月1日から24日まで豪華メンバーが1日1人ずつ知財に関する記事を書いてバトンを繋いできました。そして本日、僭越ではありますが、私が大トリを務めさせて頂きます。
https://adventar.org/calendars/4972
これまでの24名の方々はそれぞれの専門性を活かした多種多様な記事を書いて下さっています。最後となる私は、敢えて最も裾野の広い(知財を専門としない方を含む)記事で締め括りたいと思います。ぜひ最後までお付き合い頂ければ幸いです。
自己紹介
申し遅れました。
本ブログを運営している 「たま」 と申します。
私は新卒で企業の知的財産部(コーポレート部門)に入社し、新規事業系の特許関連実務を5年間担当してきました。その後、事業部に異動し新規事業立ち上げ関連の知財戦略を担当しております。知財歴は今年度で7年目です。
今年の6月に個人(会社とは無関係)で特許の楽校(がっこう)を立ち上げました。特許初心者に向けて楽しく分かりやすくをモットーとした特許の知識を発信しています。
この記事のテーマ
この記事では誰にでも分かる表現で 「特許とは何か」「特許の仕事ってどんなものか」を紹介したいと思います。
特許は技術に少しでも関わりがある人にとっては極めて重要なものです。また、学んでみると非常に楽しいものです。それにもかかわらず、特許は敷居が高く感じるのか(日本では)認知度が低いのが現状です。そこで、特許の重要性や面白さを少しでも多くの人に広めることを目指してこの記事を執筆します。具体的には、下記のような疑問に対してご活用頂ければと思います。
特許関係の仕事をしている人(玄人)
特許のことや仕事の内容をどうすれば分かりやすく人に伝えられるかなぁ…。
特許関係の仕事をしている人(新人)
特許関係の職場に入ってから日が浅くて仕事内容や面白さがまだ掴めないなぁ…。
特許関係の仕事をしてみたい人
特許の仕事に興味はあるけれど出回っている情報が少なくて困るなぁ…。
会社で研究や事業企画をしており特許の仕事と接点がある人
事業成功には特許が大事って言われるけれど関わり方がイマイチ分からないなぁ…。
特許関係の仕事をしている家族や知人がいる人
どんな仕事をしているか気になるけれど特許って何だか難しそうで聞けないなぁ…。
特許と接点が無くイメージが湧かない人
特許取得とか書かれていると何となく凄そうだけど実際よく分からないなぁ…。
Youtube動画編
本記事の内容を動画で解説しています。こちらも合わせてチェック頂ければと思います。
導入(特許ってなに?)
- 特許権は他の人がその技術をビジネスで使うことを強制的に禁止することができる非常に強力な権利です。
- これだけ強力な特許権を扱う仕事とは一体どんなものなのか、本編で説明します。
本編(特許の仕事ってどんなもの?)
ストーリーで学ぶ特許の基礎
※特許の楽校が日頃執筆しているオリジナルストーリーの番外編として書きます。
- 文房具メーカーに研究者として勤める新は 上司である朔の薦めで特許部員の瑛大から特許のことを教わっている。
- 大学院生である理人は特許部にインターンシップに来ており新と一緒に瑛大から特許のことを教わっている。
おはようございま~す。
おはようございます。瑛大さん今日もよろしくお願いします。
2人ともおはよう。今日も頑張ろうね。
そういえば今日は特許事務所の弁理士さん達がお越しになるって言ってましたよね。
まだ僕もお会いしたこと無いのでご挨拶したいです。
そうだね!新くんは今進めている新商品開発のプロジェクトで特許出願する日も近いだろうからお世話になると思うよ。
それがまだ新商品のボールペンの構想が固まっていなくて…早く開発して特許出願してみたいです。
頑張ってね!
特許事務所の先生が来るまで時間があるから、今日はこれまでの復習も兼ねて特許の仕事の全体像を説明しようかな。
ありがたいです!よろしくお願いします!
新くんや理人くんがある最先端技術を開発して特許権を獲得したとしよう。この場合、他のライバル会社がその技術を使おうとした場合にどうするかな?
それはもちろん特許権を使ってライバル会社を追い出します。せっかく特許をとったのでライバル会社に技術を真似させないようにします。
その通り!特許の大事なポイントの1つ目は特許権を獲得することで自社の縄張りを築けるということだね。
前に瑛大さんが教えて下さった特許出願や権利化ってやつですね。
特許を獲得するには!?
それじゃあ新くん。逆の場合はどうなるかな?
ライバルが特許権を獲得していたら自分達がその技術を使いたくてもやめさせられてしまいます。
そうだね。でも…ビジネスをやる上ではどうしても使いたい技術ってこともあるよね?
あります…。
そういう場合には他社の縄張りである特許権を潰して打破できる場合もあるんだ。これが特許の重要なポイントの2つ目かな。
何か縄張りの取り合いみたいになっていきますね。早い者勝ちで勝負が付いちゃうんですかね…。
良いところに気が付いたね!特許の世界ではとにかく早く陣地を押さえにいくことはかなり重要だよ。
でもね…それだけで勝負を諦めるのは早いんだ。
どういうことですか?
陣地を取り合っているとお互いに使いたい技術の特許権が持ち合いになることがあるんだ。
こういう場合はお互いの特許権をカードにして縄張り交渉をして、自分達の製品に使う技術の陣地を確保しにいったりするよ。これが特許の重要ポイントの3つ目です。
ふむふむ!何だかゲーム性があって面白いですね!
これについても前に瑛大さんが「陣取り合戦」という表現で教えて下さりましたね!
特許は陣取り合戦!?
でもやっぱり忘れちゃいけないのが最後の一つ。何か分かるかな?
もちろんです!これは瑛大さんが初日に教えて下さったことですよね。
特許からライバル達の技術情報を取り入れて研究を加速させることですね。
大正解!どうしてそれが大事だったかな?
特許権というのは世の中に技術を公開する交換条件として手に入れられるものです。普通は自分達の技術は隠したくなるものですけど、特許権欲しさにライバル達は技術情報をオープンにしてくれています。
それによって世界中でイノベーションを加速させるのが特許制度の目的の一つなんですよね。ライバル達の技術情報はどんどん取り入れて自分達の研究開発を加速させないとですね。
2人とも素晴らしい!
特許の仕事がどんなものかをまとめるとこんな感じかな!
瑛大さんこんにちは。いつもお世話になっております!
こんにちはです。
あ!茂瑚山さん真琴さんいらっしゃったんですね!こんにちは!
こちら弊社の若手研究者の新と、インターンシップ生の理人くんです。新は近々特許出願のお願いをすることになると思うのでお力添えお願いします。
はじめまして!弁理士さんにお会いするの初めてです!これからどうぞよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
こちらこそよろしくお願いします!真琴はまだ新米弁理士なので私と2人で担当させてもらいますね。
御社の文房具とっても面白い技術で大好きなんです。まだ未熟ですけど少しでも力になれるように頑張ります。よろしくお願いします。
さっき話した通り特許権というのは強力な権利であるだけに…特許法で決められたチェックポイントを全てクリアしないと獲得することはできないんだ。
特許庁の審査官による審査を突破しないといけないんですよね。
そのためには、かなり専門的な検討や、書類作成、手続等が求められる。ここをバックアップしてくれるのが特許事務所であり、国家資格を持つ弁理士さん達なんだ。
プロフェッショナル!カッコいいですね~!
そうだよね!これから先生方と特許の打合せをするんだけど2人とも参加するかい?
ぜひ!
お願いします!
読者がデザインした新キャラクター2人が遂にストーリーに登場しました!
次回、2人が大活躍!?
乞うご期待!!
特許審査の意外な伏兵
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メリークリスマス
今夜は2020年のクリスマスです。
コロナ禍で幾つものイベントが潰れてしまい例年とは違うクリスマスをお過ごしのことと思います。世の中の変化を良くも悪くも捉えるのは自分次第です。今年はコロナ禍でネット環境を通じた人材交流はむしろ拡がり、新しい知見や気付きを得た人も多かったのではないでしょうか。この2020知財系Advent Calendarもまさにその位置付けでした。
企画して下さった大坪さんや惜し気もなく知見を公開して下さったエントリー者の皆様にご感謝申し上げます。私の記事も一人でも多くの人のお役に立てれば幸いです。
2020年12月25日 特許の楽校 たま