本記事は、パテントサロン主催の「知財系ライトニングトーク #18 拡張オンライン版 2022 秋」に参加して投稿させて頂いたものです。
世の中はVUCAの時代と呼ばれております。VUCAというのは、Volatility 変動性、Uncertainty 不確実性、Complexity 複雑性、Ambiguity 曖昧性の頭文字をとった言葉であり、先行きが不透明で将来予測が困難な時代を意味しております。
複雑化した社会課題を解決するためには尚一層の多様なイノベーションが求められ、それを為す人材の育成は極めて重要です。その方針としては、専門性を高める軸と、スキル領域を拡張する軸があるかと思います。従来の表現を用いるとすれば、横軸方向に分野を拡げていく道筋がGENERALIST(ジェネラリスト)、縦軸方向に専門性を高めていく道筋がSPECIALIST(スペシャリスト)となります。複数の知見を掛け算しても個々に専門性が無ければ太刀打ちできないような課題も増え、VUCA時代を突破するイノベーションを生み出す鍵は、SYNTHESIZER(シンセサイザー)という新しい人材像にあると考えております。
個人という枠の中であらゆる分野の専門性を極めていくことは現実的ではありませんので、高度専門人材同士による共創が重要です。専門性が高い次元で人材間の共創を実現するためには、従来型のGENERALIST(ジェネラリスト)やSPECIALIST(スペシャリスト)とは異なるアプローチの育成方針が必要になると考えています。知財の楽校のSLOGANは、専門人材の共創を刺激してVUCA時代のイノベーションを後押しすることであり、そのキーパーソンとしてSYENTHESIZER(シンセサイザー)に注目しています。
専門性は高度に磨き上げる程に他の専門分野との間に隔たりが生じてしまう傾向にあります。各人材が自らの職域で専門性を高める際、その職務の主観的な立場から知識やスキルを積み上げていくと、この隔たりは大きくなり、行き着く先は 「分業」 スタイルです。
知財の楽校が考えるSYNTHESIZER(シンセサイザー)という人材像は、各専門分野の入口部分を、関わりの深い職域同士の主観客観の視点を融合し共有知識化することです。
このような専門分野の架け橋となる知識体系、共通言語があって初めて高度専門人材同士のコミュニケーションが可能となり、共創が生まれていきます。これまでも、職務Aの専門人材Aが職務Bの専門人材Bを教育し、逆に職務Bの専門人材Bが職務Aの専門人材Aを教育することによってコミュニケーションの質を図ろうという取組はあったかと思いますが、その際に伝えられていたのは、専門性を高めるための知識体系の中から初級水準を抜粋したようなものでした。これは飽くまでも各職域の主観的なものに過ぎず、共通言語として機能する知識体系に代用することは不適当だと考えます。専門分野の間に橋を架ける共有知識はこれからの時代に必要な新しい体系であり、これを創り出し、世の中に浸透させることが、知財の楽校の掲げるミッションです。
イノベーションの中核にあるのはやはり技術であり、それを支える研究開発活動には様々な専門人材が関わります。その過程で生まれるあらゆる創作は「知的財産」と呼ばれ、その保護と利用を図ることでイノベーションを加速させるために生み出された仕組みが「知的財産制度」です。実体の無いアイデアに対して国が強力な権利を認める複雑な制度ではありますので、高い専門性が求められます。知的財産そのものは研究開発に携わる全ての人に関係する事柄であるにもかかわらず、特に日本企業では長らくの間、乖離した専門分野と化してしまっております。そこで、数ある専門分野の中でも弊社は知的財産に着目し、他の専門人材との架け橋となる共有知識体系を知財教育サービスを通じて提供し、知財機能を実装した研究開発活動の普及を実現したいと考えております。
技術立脚の事業を営む企業では、事業企画、研究開発、知的財産、各職務を担当するメンバーが一致協力して仕事を進めることが大切です。研究者が研究開発によって新たな技術を生み出し、事業企画と相談しながら事業化を目指していきます。その過程では、自社技術の差別化戦略や協調戦略を実行するため、知財権で守って攻めて事業をバックアップします。
最も理想的な流れは、マーケットに求められる製品やサービスの技術とは何か、知財環境を味方につけるにはどのように研究開発を進めれば良いか、これらの将来想定を起点として、技術が生み出されていくことであり、これこそが知財の楽校が普及したいと考えている「知財機能を実装した研究開発活動」です。
知財活動の主軸となる流れは、①事業や研究開発に入り込み知財の観点から戦略をバックアップすること、②その戦略を推進する中で生み出される知的財産について知財権の活用を想定すること、③実体の無い知財を言語化し専門文書に落とし込むこと、④知財の法基準に照らして専門手続を実行することであり、これらが一つの知財活動のバリューチェーンと言えると思います。一般的には、上流側が企業内での知財企画系業務、下流側が特許事務所の支援による知財実践系業務であり、研究開発担当、企業知財担当、事務所弁理士が互いに連携して知財活動を推進していきます。
そのためには、フィールドの異なる専門人材同士のコミュニケーションの架け橋となるような知識・スキル体系が必要であると考えております。知財は研究開発から生み出されるものである以上、開発担当と知財担当との間で、開発起点の知財知識体系を 「共有」 することが大切であり、知財の楽校はそのための研修動画教材のパッケージを提供しております。
また、事業への活用を想定した知財企画を高度専門的な実務に繋ぎ込むためには、知財人材としてのキャリアの入口で、両視点を統合した知財標準スキルセットを 「共有」 することが大切と考えております。そこで、知財の実践型ゼミを提供している株式会社知財塾と共同で、新人知財担当者向け教育プログラムをプロデュースしております。
最後まで読んで頂きありがとうございました。上記のようなコンセプトで弊社が提供している知財研修用動画教材や教育プログラムについて、ご興味がある方は詳細をご覧ください。(パテサロLTとしての記事はここまでです。)
知財研修用動画教材
(研究開発担当者向け)
オンボードアイピー
知財の楽校 公式メールマガジン