本記事は “独学の弁理士講座” 主催の「弁理士の日記念ブログ企画2024」に共感し参加をするものです。
https://benrishikoza.com/blog/benrishinohi2024/
弁理士の日である7月1日に共通のテーマでブログを書いて盛り上がろうという素敵な企画…
株式会社知財の楽校もエントリーし、今年のお題である「知財業界での教育」についてブログ記事を書きました。内容は若干堅くなってしまいましたが、気楽に読んでいただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
目次
自己紹介と本テーマに対する想い
皆さんこんにちは。知財の楽校で代表をしております玉利泰成と申します。私は2014年に新卒で出光興産に入社し、最初の5年間はコーポレート系の知的財産部門で知財実務全般に従事してから、新規事業立ち上げ期のリチウム電池材料部門に籍を移し、開発現場で知財戦略の立案と推進、各種知財管理体制づくりに携わりました。在籍中の2021年2月に副業で知財教育サービスの個人事業を開業し、半年後の8月に法人成りして創業した会社が知財の楽校です。その後、出光興産を退職し、現在は建設テックベンチャーのPolyuseというスタートアップで知財責任者として働いています。また、2023年10月からは知財塾の社外取締役も務めております。
知財の楽校における私のモットーは、自分自身が経営・事業・研究開発の現場に飛び込んで知財活動の当事者として経験を積みつつ、そのナレッジを体系化し作成したコンテンツを広く業界に向けて発信していくことであり、事業・研究開発を担っている方々の目線に立った知財教育を追い求めたいと考えています。本記事では、その意図を4つの切り口から述べたいと思います。
演繹的な知財創出活動を推進する
第一に、演繹的な知財創出活動を推進するためです。研究開発による様々な実験事実を基に上位概念化し、後追いの調査結果を踏まえて発明等を見出す帰納的な知財活動(俗に言う発明発掘型)では、足元の研究開発成果を起点にしていることから、中長期的目線の事業戦略からバックキャストする知財創出活動は必ずしも生み出せないと考えています。VUCAの時代である昨今のイノベーションを伴うビジネスモデルを検討するうえで、知財権によるポートフォリオ形成を逆算的に前倒し獲得する演繹的なアプローチは極めて重要です。これを実現するためには、知財創出活動の入口から知財知識を前提として携えていることが必要であり、ここに知財教育を先行させる重要な意義があると考えています。
知財知識体系を事業・研究開発目線から再定義する
第二に、知財活動の源流たる事業・研究開発を担う方々の目線に立ち知財知識体系を再定義するためです。上述した帰納的アプローチでの知財実務が長らく主流であったことから、知財専門人材が発明を発掘して如何に法基準を味方に付けながら出願を起案するか、そのビジネスインパクトを最大化させ、将来の技術開発構想を拡張的にカバーするために、発明者にどのような情報を提供して欲しいのか、飽くまで知財専門人材の実務成果を高めることを目的とした知識供与に傾いていたように思います。一方、演繹的な知財創出活動を生むためには、その源流たる事業・研究開発を担う方々の目線に立って知財知識体系を再構築し、入口から使いこなしていただくことが必要になるはずです。そして、知財専門人材にとっても、この新たな目線からの知識体系をアップロードする必要があると思っています。
知財専門人材とのコミュニケーションを円滑にする
第三に、事業・研究開発を担う方々と知財専門人材とのコミュニケーションを円滑にし、対話の解像度を引き上げる後押しをするためです。ここまでで二つの理由を述べてきましたが、中長期的な事業戦略やビジネスモデル、研究開発構想を踏まえて演繹的な知財創出活動を推進することは、言うは易く行うは難しです。これを行うには、ファクトやエビデンスと言えるものまでがなくとも、世の潮流や人の頭の中にある思想を引き出し合うことで構想を固めていくプロセスが求められ、高次元のコミュニケーションが必要になります。そのベースとなる知識体系は、このような対話を進める論点や思考プロセスを意図したものであることが望ましく、これを型化できればコミュニケーションの質を一気に底上げできると考えています。
知財教育は知財専門人材の成長も加速させてくれる
第四に、これらの位置付けを有する知財教育をミッションに据えておくことで、事業・研究開発に資する知財活動とは何か、そのエッセンスとなる視点や知識は何か、その思考を常に巡らせ言語化を図りながら知財専門人材としての成長を加速できると思うからです。知財に関連する法基準やプラクティスは特殊で奥の深い世界であり、変遷とアップデートを繰り返しているため、専門性を鍛えることは大切です。一方で、ふとするとその特殊な世界に閉じ籠って小手先の知財活動を掲げてしまいそうになるため、常に知的財産を生み出している方々の目線で基礎にあたる知財知識体系を問いただし続けることが自身を成長させる鍵になると信じています。そういう意味では、事業・研究開発の方々に向けた知財教育に携わることは、知財専門人材である「自身に向けた教育」とも捉えています。
最後に一言
以上、4つの切り口から、私の思い描いている「事業・研究開発に資する知財教育のあり方」を書き綴ってみました。今後もこの想いを胸に事業・研究開発の現場に飛び込んで知財活動に取り組みつつ、その経験やナレッジをもとに知財教育コンテンツを作成し、広く業界に発信していければと考えています。どうぞよろしくお願い申し上げます。
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